HOWS講座「福島原発事故から8年の現実」
棄民政策と放射能安全神話普及に励む政府・東電への抗議を強めよう


 七月六日、國分富夫さん(相双の会会長)のHOWS講座「福島原発事故から八年の現実」が行なわれ、これからの反原発運動をどう取り組むかについて討論した。
 まず、報告の概要を示す。八年以上たっても終わらない、どうにもならない福島の現実を見ればわかるはずなのに、各地の立地地域では、未だに原発なしでは経済が成り立たないと信じられ、原発再稼働の流れになっている。事故が起きたら、経済どころではない。もう二度と家に戻れない。
 政府は、棄民政策と放射能安全神話の普及によって、事故はなかったことにしようとしている。日本は情けない国だ。
 日本は広島・長崎の被爆国であり、福島原発による被ばく国となった。セシウム一三七がほぼなくなるまで三〇〇年。原発を許してきたわれわれ世代は、子どもたちの未来に責任があることを自覚して、反原発を訴えなければならない。

「復興」の陰で増え続ける関連死

 四月に大熊町役場が開庁した。新庁舎は渡辺利綱町長の土地に三一億円をかけて作られた。帰還住民五〇〇人、廃炉作業員ら九〇〇人を目標に、呼び込む計画である。
 先月見学に行った双葉町役場は、今も当時のままで、壁には原発事故対応の指令メモが貼られていた。双葉町南小学校の六年一組の教室にはランドセルなどが残され、黒板には「三月十一日(金)卒業まであと八日」と書かれていた。その時避難した子どもたちは、今年成人式を迎えた。
 震災関連死者数は、岩手県(約五〇〇人)や宮城県(約一〇〇〇人)に比べ、福島県は約二三〇〇人と多い。実際は三〇〇〇人超とも言われ、今も増え続けている。復興住宅では近隣との交流がなく孤独死が多い。事故ですべてを失い、避難生活の疲労蓄積、元へ戻れないことへの絶望による自死者の数は、福島県が最も多い。
 昨年十月、国連人権理事会の特別報告者バスクト‐トゥンジャク氏は、日本政府に対し、年間二〇ミリシーベルト以下という帰還基準をやめて、年間一ミリシーベルト以下にすべきとの声明を発表した。

国連人権理事会特別報告を無視

 それに対して政府は、「こういった批判が、風評被害などの悪影響をもたらすことを懸念する」などと反論した。日本という国は、放射線業務従事者の年間被ばく限度である二〇ミリシーベルトを子どもや妊婦にまでにも適用しようというひどい国である。
 飯舘村は当初、原発事故避難者を受け入れ、ミルクを提供したりした。後にそのミルクは放射能に汚染されていたことがわかり、飯舘村の人は今でも心が痛むと言う。
 法律上一平方メートル当たり四万ベクレル以上は放射線管理区域とされている。浪江町の避難指示解除された地区のほとんどは、四万~三百万ベクレルの強い放射能があり、三百万ベクレル以上のところも点在する。非常に危険な地域であるにもかかわらず、ここで生活しろという。むりやり帰還させ復興を演出しようとしている。
 もう住めないと思った住民が、他の地に家を建て、元の家を解体して更地にすると、更地の固定資産税は家が建っていた時の四~七倍になる。住んでいる家の固定資産税と元の土地に対して二重に税がかけられる。まして消費税が上がるとなると生活できない。少なくとも、固定資産税の二重払いについては国が指導して東電に支払わせるべきである。
 ただし、福島は「住めない県」ではない。福島県は広い。住めるところが多いこともわかってほしい。

権力に加担する 裁判所

 原発事故の被害者には何の落ち度もない。その被害者を救うためにあるべき裁判所が、国、東電に有利な判決を出している。時の権力におもねる裁判官が多い。まともな裁判なら全面的に被害者勝訴となるはずである。
 被害者には安全性の担保が必要である。広島・長崎の被爆者健康手帳のような、医療保障が確保される被ばく者手帳が交付されるべきだ。
 東電は、先祖代々の農地、苦労して作り上げた農地を放射能で汚染し、未来世代へ引き継げなくしたのだから、一〇〇年は賠償すべきである。
 所得補償を四年で打ち切ってきた東電に対し、一人で訴訟を起こした飯舘村の伊藤延由さんに話を聞いた。かれは、「被害者が負うべき責任は一切ない」、「一方的に農地を汚され、現状回復がないのに、加害者が一方的に賠償を打ち切るのは納得できない」と話した。東電側は「賠償は四年で十分果たされた。その間就職活動をしてこなかったあなたが悪い」と言ったそうである。
 政府は、フレコンバックの中の汚染土を取り出して、全国の公共事業の盛り土や農地、公園造成などに再利用する方針を決めた。そうすれば、最終処分場は作らなくて済む。密閉すれば大丈夫というが、何百年も誰が管理するのか。放射性物質の全国への拡散にほかならない。いったんこれを認めたら、電力資本は、事故を起こしても福島の前例にならって対処することになる。

運動の課題と要求

 講座の後半は、國分さんの講演を受けて、質疑応答とこれらの問題にどう取り組むかについて意見交換した。以下、主な内容を挙げる。
・加害者東電が被害者を査定し、和解拒否や賠償打ち切りなどを行なう一方で、日本原電の東海第二原発再稼働のために資金支援を行なうことは許されない。東電への抗議を強めよう。毎月第一水曜日(六時半~)の東電本店抗議行動に参加しよう。
・政府に対し、被ばくによる健康被害を補償する被ばく者手帳の交付を要求しよう。
・東電には、未来世代の被害も含め一〇〇年賠償を要求しよう。
・東電は、原発事故避難等により発生した固定資産税の二重払い分を負担するよう要求しよう。
・汚染土壌、フレコンバッグなど放射能汚染ゴミは、発生源の東電にすべて引き取らせ、福島第二原発敷地内などで厳重に管理するよう要求しよう。
・福島第一原発からのトリチウム・他核種混合汚染水の海洋放出を許さず、叡知を集めて対策をとるよう要求しよう。
・政府の情報操作、世論誘導に抗し、原発事故被害者の声を聞き、広く伝えよう。福島第一原発事故を終わったことにさせてはならない。【中村泰子】

(『思想運動』1043号 2019年8月1日号)